膵臓のエコー
とりあえず、あの番組をググってみる。
①膵臓がんは早期発見が特に大事
②膵臓がんの早期発見に役立つ「エコー検査」
③エコー検査を受けるべき人は?
ふむふむ。なんとなく膵臓でなくても当てはまる気もします。
ザックリまとめると
膵癌は1センチ以下の超早期発見で見つかった場合は転移もなく生存率は80%
↓
CT、MRI、PETなどの検査では早期発見は難しい
↓
そこで小さな癌のサインを見つけるのにはエコー検査!
ということでした。
とりあえず、日常でエコー検査に携わっている臨床検査技師としてはちょっぴりうれしくもあるような、次の日に番組の影響を受けてあれこれ質問されるんじゃ・・・と思ってしまったり、ラジバンダリな内容だったのではないでしょうか。
膵臓は沈黙の臓器とも言われますし、確かに発見が遅くなってしまうと怖いところはあります。
エコーとして膵癌の所見は以下のようになります。
・限局性の腫大
・限局性の低エコー域
・尾側膵管の拡張
・周辺血管の偏位、狭窄
ですが、膵臓という臓器は膵頭部、膵体部、膵尾部の3つに分けられます。
膵癌といってもどこの部位にできるかによって所見は変わります。
番組内では膵管の拡張を取り上げていましたが、それは膵頭部の腫瘤については言える所見になります。
膵尾部側に腫瘤があった場合は膵管の拡張は特徴的な所見ではありません。
・膵頭部癌
膵頭部の限局性腫瘤
膵管の数珠状拡張
・膵尾部癌
膵尾部に認められる低エコー腫瘤
腫瘤の深部における脾静脈の不明瞭化
また、数珠状に膵管の拡張と書きましたが、膵管の拡張には種類があります
不整拡張
平滑拡張
数珠状拡張
不整拡張、平滑拡張は膵炎症例、数珠状拡張は悪性が疑われるものと覚えています
確かに膵管の拡張は早期発見のサインというは間違いではありません。
しかし、検査をする立場としては腫瘤の像も描出できることが大切ということを私は教わりました。
それだけでは腫瘤の見落としに繋がりかねないということです。
そこに臨床検査技師としての技術や経験も必要になります。
私も膵管拡張例には遭遇したことがありますが、腫瘤像がどうしてもエコーで描出できず、造影CT等の検査に回ってもらい確定となりました。(ある意味、早期発見だったのかもしれませんが)
勘違いして欲しくないのは、エコーで見つけれなかったからCTに回ったわけではなく、医師が確定するにはCTの読影結果も必要になります。ただ、CTと言っても造影剤を使って行うので、点滴のように針を刺して行う検査になります。それを何の疑いもせずにやるよりは、無侵襲でできるエコー検査の利点はあります(番組では比較的安価とも言っていました)。エコーで疑わしい所見がないとわかれば医師も追加の検査は依頼しません。
なので、エコー検査の所見の診療への貢献度はあると思います。
また、癌だけでなく膵臓の嚢胞性病変というものもあります。
様々な種類があり、経過観察が必要なものから、malignant potential(悪性所見になる可能性)として考えるものもあるので、注意が必要です。
膵嚢胞性疾患
・漿液性嚢胞性腫瘍 中年女性の膵体尾部に多い →良性、経過観察
・粘液性嚢胞性腫瘍 中年女性の膵体尾部に多い → malignant potentialとして外科的に切除
・膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)→分枝型、主膵管型がある 切除 or 観察
膵臓は胃や十二指腸、横行結腸が走行している場所であるため、消化管のガスの影響を受けやすく、エコーでの描出に個人差があります。体位変換、プローブの圧迫、飲水法などガスの影響を軽減する工夫もあります。エコーは万能な検査ではなく、弱点も少なからずあり、健診レベルで見つけるにしてもすべてを実施したら時間もかかってしまいます。
テレビで言ってたからと、膵臓をエコーで見て欲しい気持ちになりますが、いろいろ大変な訳ですね。
腹部エコーを受ける機会があれば膵臓は必ず見るので、心窩部痛スクリーニングで偶然見つかる事もあったり、血糖値の急な上昇から検査を受けて見つかる事もあります。
また、膵管は胆嚢管と合流していているので膵頭部の腫瘤が周囲の環境を巻きこんでしまうと、胆管閉塞を起こして黄疸になることもあります。 (その時点でどの程度の進行性かについては言及できませんが…)
簡単まとめてみましたが、質問された時にこれをすべて話せないので、「膵臓は見ていますが、よく見える人と見えない人もいますね〜」とか言っている方もいるのではないでしょうか。
全部を書くと果てしなくなるので、専門でやっている方には内容が薄いと思われるかもしれません。恐れ入ります。あとラジバンダリって何だよ…。
テレビ番組の医療、健康情報も見てみると少し気になってしまうのも職業柄なのかもしれませんね。自分の勉強も関連づけてまとめてみるのもまた良いですね。
参考