HIVの検査
先日、ボヘミアン・ラプソディーの映画を見てきました。
Queenの曲はテレビで流れたりしていて、なんとなく知っていましたが(一番、印象に残っているのは岡村さんがブレイクダンスをしているCM)、フレディー・マーキュリーは世界に大きなものを残していったのだということをはじめて知りました。
さて、この劇中にHIVに関する内容が描かれている訳ですが、私も医療に携わる者として、知らないままではいられないなぁと思いました。
国家試験の勉強で、PA法などでスクリーニング検査、ウェスタンブロット法で確認検査と覚えたと思います。
仕事では特殊試験管で採血をして、後日、「親展」と書かれて糊付けされた葉書型の報告用紙を返したりしている方もいるのではないでしょうか。
検査センターや血液センター、または大学病院規模でなければ、実際に検査をしている人は少ないと思います。
私もその検査を行ったことはないため、詳しいことはわかりませんが、少し勉強がてらまとめてみました。
HIVとは
ヒト免疫不全ウィルス human immunodefeficiency virus::HIV
のこと。このウィルスによって引き起こされるのが
エイズ(後天免疫不全症候群):acquired immunodefi-ciency syndrome:AIDS
エイズウィルス という言い方は間違いです。
CD4抗原を発現しているヘルパーT細胞に結合して潜伏感染します。HIVが増殖するとヘルパーT細胞が破壊されてしまいます。ヘルパーT細胞は体の中の異物を認識して防衛する司令塔の役割があるため、その機能が落ちると様々な免疫機能に影響が出てしまい、免疫不全になってしまいます。
※CD4抗原
ヘルパーT細胞、単球、マクロファージ、樹上細胞表面に発現している糖蛋白のこと。
Wikioediaより
※B細胞(CD20)がヘルパー T細胞から抗原情報を得ることで、形質細胞となり抗体を産生する(液性免疫)
※免疫学はややこしいですね。私もちょっと苦手です。血液学とも関連ありますが、ウィルス性の疾患のだとリンパ球の分画が増加しますね?そういうことです。細かくみるといろんな働きがあるのです。働く細胞です。また、免疫学についての記事を描いてみたいとおもいます。
そのような状態になると免疫機能の働きによって抑えられていた細菌類が活発になり、健常人よりも感染症を起こすリスクが高くなります(日和見感染)
※他にも悪性腫瘍やHIV脳症などの合併症がある。
それだけでもとても怖いのです。
以前、肺炎と心エコーについてを書きました。この肺炎のリスクも高くなります。それ以外にも免疫機能が低下することで、合併症も引き起こすため、高い確率で死に至るとされています。
※研究が進んでいる現在ではウィルスの増殖を抑えることができるようになり、死亡のリスクは下がってきているそうです
ウィルスってすごくタチが悪くて、潜伏して無症候期が6ヶ月〜20年もあり、その間で徐々にCD4陽性細胞(つまりはヘルパーT細胞)の相対数は減っていきます。また大体、感染して数週間は検査をしても陰性になることがあり(ウィンドウ期)、じわじわと進んでいって、最後にエイズ期を迎えます後天的に免疫機能が落ちていく訳です。
※ウィンドウ期は肝炎ウィルスにもあります。
HIVウィルスは1型(HIV-1)と2型(HIV-2)があり、サブタイプと呼ばれる色々な株が存在しいています。流行株となっているものが分類されています。
- HIV-1 :サブタイプ グループM,O,N さらにグループごとに数種類に分類される
- HIV-2:A〜Gに分類される 局所流行している
HIVウィルスは変異の頻度が高く、新しいサブタイプの出現は検査に使用している抗原との反応性に違いを生じて問題になります
HIVの検査
HIVの検査は抗体検査が従来行われてきました。ウィンドウ期を除けば抗体は検出可能で、現在は抗原・抗体同時に検出する試薬も開発されている(第四世代)
また、ウィンドウ期などの抗体陰性期はウィルスゲノムの検出などの遺伝子検査も有効です。治療効果の判定に有効な検査になります※他、p24抗原抗原の検出、ウィルス分離もありますが、説明が難しいので割愛させていただきます
この二つの検査をあわせて、抗原・抗体検査でスクリーニング検査、陽性だった場合は確認検査を実施しています。
[抗体検査]
ゼラチン凝集法(PA法)、EIA 法、ウェスタンブロット法(WB法)
[抗原検査]
EIA法、CLEIA法、PCR法
ウェスタンブロット法は抗体の検査になるんですね。
[簡単なフローチャート]
HIV-1 スクリーニング検査(ELISA、PA法)
↓陽性
HIV-1確認検査(WB法、RT-PCR法)
↓陽性もしくは陰性、判定保留
HIV-2確認検査
関連サイト
テーマが大きいため、記事のなかではまとめきれません。いろんなサイトに情報があると思われます。治療相談窓口など全国保健所等にあると思われますので、そちらを見ていただくのが良いと思います。リンクを貼っておきます。
あくまで臨床検査技師のという医療従事者の立場から簡単に書かせていただきました。専門家ではないため、間違った情報もあるかもしれません。ご理解いただければ幸いです。
参考
映画ももう一度見に行きたいです。