一人暮らしをはじめた話①
それは、勇者ノーテンが30歳の誕生日を迎える朝だった…
「おきなさい、おきなさい、わたしのかわいいノーテンや…」
母「おはようノーテン。今日も仕事でしょう。ご飯ができてますよ。食べて行ってらっしゃい!あと、お弁当もできていますよ。
(※ドラゴンクエスト3より引用)
…いつもと変わらぬ朝だった。
朝起きたらご飯もお弁当もできていて、それから着替えて家の車で仕事場へ向かう。
仕事が終わったら夕飯ができるまで待っている時間がいい歳して恥ずかしく感じた。それでも皿洗いなどの後始末は手伝っていたが、さすがに早く帰ってからは何もできる事がないため、わざわざ寄り道をして夕飯が出来上がる時間に帰っていた。
何も考えなければ何不自由がなく幸せ何生活だったと思う。
これまで何度か一人暮らしをしようとした。しかし、なぜか決断ができなかった。
あまりにも今ある生活が心地よすぎて出ることができなかったのだ。
職場から遠くなることさえも躊躇してしまっていた。
このままじゃダメだと。本心はそう叫んんでいるのにイマイチ気持ちが進まない。
どうしようかと悩んでいる時に、職場の事務の方から「職員寮が空いているからもしよかったら入ってみたらどうか?」という話を頂いた。
しかし、その話さえも躊躇してしまっていた。
わざわざ地元に部屋を借りる必要もない。あえての電車で行った隣町に引っ越す事にこだわっていた。そのこだわりのせいか、なかなか決まらなかったのだと思う。
結局、あーだこーだ真っ当な理屈を考えては諦めていたので、もう一人暮らしなんて考えるのは疲れるからやめようとそう思ってしまっていた。
またいつもの朝を繰り返しながら、幸せな日々を送るノーテンであった。
二話へ続く