NOUTEN QUEST✨

過ぎ去りし時を乗り越えて…

新ヘタレ戦記 ノーテンW(ウイング) 第3部

 ※前回までのあらすじ

仲間との別れに涙を流しながらノーテンは新たな戦地に立った…。しかし、人間関係に馴染めず、ついには他部署に謝る程のミスをしてしまう。自信と信頼を失ってしまったノーテンは自爆を決意し、自ら戦地から退く選択をしたのであった…。

 

 

 

第3部
OP
UVER world
Colors of the Heart

 

Colors of the Heart

 

 

 

味のないガムを噛み続けているような毎日だった。朝起きて何もすることがなかった。とりあえずゲーム機のスイッチを入れて、疲れたら寝る。飽きたら外で一服。心配した友達が週末、飲もうと言ってくれたが、そこまでが果てしなく遠くに感じる程であった。

 

貯金は1ヶ月しかもたなかった。幼馴染みの結婚式に参加したニート。仕事辞めたことなど話せず、いよいよどうにか収入を得なければとノーテンは焦った。

 

世間では歩きスマホや3DのTVなどが流行っていたが、ノーテンはどちらも持っていなかった。コンビニのタウンワークで見つけた登録性の派遣バイト。朝、駅の改札で待ち合わせをしていた時、道行くスーツを着た大人達が羨ましく見えた。自分も少し前まではあちら側にいたのだ。

 

 

 

 

 

「君はどうしてこんなバイトをしているんだい?」

 

 

 

 

引越しバイトのトラックでドライバーのおっちゃんに尋ねられた。ノーテンはこれまでのいきさつを話した。

 

 

 

本当はもう資格を生かした仕事なんかするつもりはなかった。別のものになろうとした。しかし、仕事を辞めた辛さに比べたら人間関係で悩んでる辛さの方がまだマシなのではないかと。そうも感じていた。

 

 

 

 

 

「そうか…医療の資格をもっているのか。それは立派だ立派だ。頑張ってね!!」

 

 

 

 

肩肘を窓に当てて彼方を見つめているノーテンにおっちゃんはそう言った。

 

 

 

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窓の外の綺麗な夕焼けが目に入ってきた…。

 

 

 

おっちゃんの言葉が心に響いた。いつまでも派遣バイトで生活できる訳がない。なら、自分にできることは…。1つしかなかった。

気がついたら、ハローワークに行っていた。「短期でもなんでもいいから、資格を活かして働ける場所を探したいです…!!」

 

ダメ元で面接にいった。出てきた所属長は母親とさほど変わらない年齢の人だった。何を話したかは今は覚えていない。淡々と施設を案内してもらい、事務長と面接。一週間も待たずに3ヶ月の短期契約として採用が決まった。

 

 

 

新しい職場は下町の小さな診療所だった。それまでいた総合病院と比較したら患者に近いところで働いていたように思えた。そこで生化学以外にも心電図や採血をはじめ、慣れてきた頃にエコーも触らせてもらった。

 

 

 

 

 

「やさしい手ですね。ありがとう。」

 

 

 

 

 

はじめて採血をした患者さんに言われたのを思い出す。あぁ、きっとこういう仕事をしたかったんだ…と少し目が潤んだ。仕事もある程度覚えて3ヶ月が経とうとした時、所属長から食事に誘われた。

 

 

 

「…実は、あなたに契約の延長をしてもらいたいの」

 

 

そう言われた。そもそも3ヶ月契約は病気で休職されている方の代わりの人員らしかった。その人の復帰がまだ難しいことと、よく働く若い子だから是非ともお願いしたいと言われた。

 

「はい!よろしくお願いします!!」

 

こうしてノーテンはフルタイムのパートとしてその診療所の職員となった。新しい生活が始まった…。

 

 

第3部