NOUTEN QUEST✨

過ぎ去りし時を乗り越えて…

新ヘタレ戦記 ノーテンW(ウイング) 第4部 後編

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第4部

後編

今、何が起こっているのか。うすうす感づいてはいたが、上司から発せられるプレッシャーに周りも口を閉ざしている。視線は自分に向けられている。脇汗がじわじわと出てくる…。

 

「聞いたんだけど、ノーテン。あなた、正職員で働ける場所を探しているそうね。」

週末の飲み会で話した時には母親上司はいなかったがが、心配した同僚が朝、事務長にその話をしている時に、たまたま小耳にしたそうだった。

 

「私はあなたのためを思って、事務長にも掛け合ってきたのに、その気持ちを踏みにじるのね!」

思ってもいない言葉だった。驚きを隠せずに、呆然としてしまう。

 

「あなた、うちで正職員になりたいなんてアレは嘘だったの?もう一度、確認させて!!」

嘘も何も正職員になれないんじゃ、そうするしかないだろうと、自分の気持ちをわかってもらえないことに苛立ってきた。

 

「はい…ここで正職員になりたいです。申し訳ありませんでした…」

恐る恐る答えてその場は治ったが…あまりにショックでノーテンは仕事を早退した。「ぷっ…」と鼻で笑う声が聞こえた…。

 

それからは母親上司とは微妙な違和感を感じながら仕事をすることになった。やさしさが逆に怖かったりもした。しかし、この時にプライベートでとんでもないことが起こった。

 

 

以前に副業をしようと申し込んだものは詐欺だった。電話だけのやり取りで、スマホで商品の記事を書くというものだったが、そのシステムを作るのにお金がかかると言われた。

 

 

何も疑わず、もちろん手持ちも貯金もなかった。どうしようと戸惑っていたら、テレビで阿部寛が「ご利用は計画的に」

 

 

うすうす怪しいなとは感じていた。上司や友達に相談すれば良かったかもしれない。彼女とは連絡がなかなか返って来ない仲になっていた。生活費を稼ぐためならと、安易に1人で考えてカードローンで払ってしまった。かなりの額だった。それから電話の相手とは連絡がとれなくなった。

 

 

後頭部を思いっきり殴られたようにズキズキ鈍い痛みと、吐きそうなくらいな不安な気持ちが続いた。仕事も集中できなくなった。母親上司とは小さな衝突も増えた。

 

ある日の昼休みの時間、閉めっきりの部屋から話声が聞こえた。気になって聞き耳を立てると、母親上司とママさん先輩、事務員のお姉さんが話していた。…自分の悪口を言って笑っていた。

 

 

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ショックだった。金は取られるし、良くしてくれた方々との人間関係も悪くなるし。自分を抑えられなかった。(やめろ!やめろ…!!)心の叫びも虚しく、気がついたら、払い飛ばすように扉を開けていた。

 

 

 

…結果的にノーテンは契約満了までに次の仕事場を探すことになった。せめてものやさしさなのか、お互いにとっての良い選択なのかわからないが、 とにかく頭の痛い日々は続いた。

 

 

借金を抱えて、仕事も不安定で愛想をつかされて彼女からも振られた。自暴自棄とはこういうことをいうのか。収入を得るために毎日、パチンコ屋に行った。友達と行ったバーでナンパして、新しい付き合いを作った。

 

 

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返済もしながら生活の資金はカードローンに頼ることになっていた。気がつけば倍に負債は増えていた。おまけにクレジットもリボ払いにしていよいよ金銭感覚も狂っていた。

 

 

唯一の望みは正職員になること。それしかなかった。

なりふり構わず応募して就活した。しかし決まらない。つなぎで賞与有りのテンポラリースタッフに申し込んだが、面接後に技師長から「若んだから正職員を目指しなさい…」と、都会の夕日を眺めながら諭された。

 

 

もうダメだ…。正職員になれず、このまま落ちぶれるのか…と思ったその時…実家から電話があった。どうやら地元の病院で求人があるから来ないかと、家に電話があったらしいのだ。

 

 

喉から手が出る程、うれしい話だった。しかし、こんな状況でも東京で頑張りたい…と、愚かだった。「せめて見学だけでも!」と地元の病院から再度の連絡があってノーテンは訪問をすることにした。

 

 

 

蜘蛛の糸 (280円文庫)
 
 

 

芥川龍之介蜘蛛の糸という話はこんな感じだったのかもしれない。過去に何か善行があったのか。地元の病院を訪問して、検査室の前で部長と先輩と挨拶をして、意気投合した。「じゃあ、この後飲み行く?」ゆっくりゆっくり…自分を地獄から引き上げてくれた。愚かな言葉など口に出せなかった。

 

部長が上に声をかけて、面接をしてノーテンは地元の病院の正職員となった。「おめでとう!」と東京の職場からも言われた。散々、ご迷惑をおかけしたのに、「おめでとう!」と言ってくれた母親上司は本当に母親のようだった。

 

最後に母親上司の一人娘の結婚式に出席させてほしいと、一人、土曜勤務を任された。それっきり、そこの職場の方々とは連絡をとっていない。ボロボロのノーテンガンダムにのって、ノーテンは地元のコロニーへ帰ったのであった…。

 

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第4部 完

 

→ to be Endless Risoku...