一人暮らしを始めた話➁
※ドラゴンクエストⅢより
ノーテンは隣町まで車で通勤していた。
山を越えた先には都会がある。
休みの日は山を越えて遊びに行って、そして山を越えて帰ってくる。
ちょっと前まではその先に住んで働いていたのに。
いわゆる出戻りであることは、重くのしかかっていた。
このまますんなりと出るなんて心理的プレッシャーが大きすぎる。
王様には気を遣ってなのか、お利口さんを演じてしまっていた。
アリアハンを出るには王様の許可はきちんととらねばならない。
このままでいい…。このままでいい…。
きっかけはある日突然、訪れた。
ある日の夕食の時間に、ほんの些細な事で王様と女王様が喧嘩になった。
黙って聞いていたが、王様の正論に負けてしまった女王様はネチネチとひねくれてしまった。
いつものことなんだと思って聞いていたが、お酒も入って悪酔いしてなのか、歳もあるのか、いつまでも暗い話をし続けた。
良くも悪くも、この女王様の性格を知って、上の兄弟達は早く王宮を出て行ったのだ。
自分は一緒に住んでいる分、ある程度はわかっていた。
しかし、ついに自分に言いがかりをつけてこられた時にはムッ!としてしまった。
抑えていた気持ちが急に溢れてきた。
このまま一緒にいたらずっと自分の意志を抑えたまま暮らしていかなければならないのか。
女王様ネガティブの要因を作ったのは都会で仕事が上手くいかなかった自分のせいでもある。
ノーテンはふと、職場の寮の話を思い出し、次の日には職場の総務課にそこに住みたい話を切り出した。
その話をした時、王様は黙っていた。女王様はついにきたかと、少し寂しそうな顔ををしていた。
勢いで決めてしまったことに迷いを感じながらも、ノーテンは実家を離れて仕事場の近くにある寮生活を始めることにした。
…これでめでたしめでたし…なお話ではない。
物語は③話へ続く…